皆様、いかがお過ごしでしょうか。熱中症警戒アラートが続いた夏がうそのように朝晩がすっかり寒くなってきました。
 さて、10月には新たに高市早苗総理大臣が選出され、高市内閣が発足しました。私はサイバーセキュリティ戦略本部員を務めていた際に高市総務大臣と首相官邸での戦略本部の会合でご一緒させて頂いたことがあります。高市総理には『サイバー攻撃から暮らしを守れ !』という優れた著書もあります。また、その所信表明演説におきまして、新しい戦い方の顕在化など様々な安全保障環境に変化が見られることから国家安全保障戦略を始めとする所謂「防衛3文書」を来年中に改定することを目指し、検討を開始すると表明されました。現行の「防衛3文書」が策定された2022年12月以降、サイバー空間における安全保障環境も大きく変化しております。高市内閣の下で政府がサイバーセキュリティを一層重視することは言わずもがなでありましょう。さらに、防衛大臣には小泉進次郎先生が就任されました。小泉先生には弊会の発足式においてビデオメッセージを賜り、その後も機会あるごとに弊会スタッフへお声がけいただいております。私達の活動拠点は横須賀であり、サイバー教育に係わる防衛省・自衛隊の機関が多く集まる横須賀の地ご出身の防衛大臣の誕生を大変嬉しく思います。
 弊会の近況といたしましては、安全保障関連の各機関の人事異動にあわせた表敬訪問、加えて意見交換会を実施し、また、人材育成に関するワーキンググループを編成し、活発に活動しております。恒例の講演会も概ね月1回の間隔で開催しており、7月には情報経営イノベーション専門職大学の平山敏弘教授に「世界から見た日本のサイバーセキュリティ人材育成の現状と課題」について、9月には東京通信大学の前川徹教授に「DXとAIと情報社会の未来」、10月には元警察庁サイバー警察局長で現在一般社団法人保安通信協会専務理事の河原淳平氏に「サイバー捜査の課題と展望」についてご講演いただきました。
 サイバー空間に目を向けますと、9月、10月には大手企業がサイバー攻撃を受け、ERP(統合基幹業務システム)が停止し、複数のセクションで深刻な障害が発生したとの報道がありました。この攻撃はランサムウェアによるもので、企業のコスト削減や業務効率化のために進められているERP導入が一度障害を受けると、連鎖的に被害が拡大し、復旧に時間がかかることが改めて明らかになりました。大企業がサイバー攻撃に備えた対策を講じているとはいえ、完全に防ぐことは困難であることは明白です。この事案は、攻撃を受ける前提で事業継続計画(BCP)を策定し、基幹システムにおいても「セキュリティ・バイ・デザイン」を設計段階から実行する重要性を再認識させるものとなりました。
 今後、攻撃手法への対応策が明確になるでしょう。デジタル庁においては、松本尚大臣の下で新たに設立される官民協議会を通じて情報共有を進め、同様の被害防止に努めるとともに、多くの企業がこの協議会に参加することを期待しています。
 不足しているサイバー人材の育成についても、官民協力なしではその質と量を拡大することは不可能であり、喫緊の課題として認識しております。弊会としても引き続き努力を重ねて参ります。
 寒さに向かう季節です。皆様どうぞご自愛ください。
理事長 中谷和弘
