1月 理事長挨拶
皆様方におかれましては、穏やかな新年をお迎えのことと拝察致します。
旧年中、皆様方には発足直後の弊会の活動に対して格別なる御高配を賜り、おかげ様で昨年末には設立1周年を迎えることができました。厚く御礼申し上げます。
弊会の活動について申し上げますと、昨年は役職員の意識統一と知識向上を図るため、5月を皮切りに6回の講演会を開催することができました。また、官民連携の橋渡し役として関係各部との意見交換等も数多く実施致しました。本年はこれらの活動も含め、更なる活動範囲の拡大深化を図る所存です。
国際情勢に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵略が続いているところ、昨年秋には北朝鮮部隊のロシア派遣という新たな展開が生じました。この北朝鮮に関し、昨年5月、対北朝鮮制裁の状況を監視する国連安全保障理事会専門家パネルが、「北朝鮮が2017年から2024年4月までに暗号資産の関連企業に対して97回にわたりサイバー攻撃を繰り返し、約36億ドルを窃取した疑いがある。」と明らかにしました。併せて、これを国家財政に組み入れ、軍事力の増強に使われているとの報道がございました。
またEU は、EU域内の社会・経済のデジタル化の進展もさることながら、ロシアによるウクライナ侵略等を背景とするサイバー脅威の増大を背景に企業に対するサイバーセキュリティ規制を強化しております。具体的な一例として、2024年10月「サイバーレジリエンス法」(CRA)を採択し、最低限のサイバーセキュリティ要件を満たさないデジタル製品(ハードウェア、ソフトウェア)の域内流通を2027年12月以降禁止すると宣言しています。
中東に焦点を当てますと、イスラエル・ガザ情勢は引き続き混迷の度合いを深めています。昨年9月にイスラエルと戦うハマスを支援するレバノンのヒズボラ戦闘員らが所有するポケベル・無線機が一斉に爆発し3000人以上が死傷しました。この件ついて、11月にイスラエルの首相はその関与を認め、サイバー技術を用いてイスラエルのフロント企業が数年がかりで準備し、製造したものとされています。
サイバーセキュリティはサイバー空間で生ずる現象だけでなく、デジタル製品の製造流通というサプライチェーンにも直結しており、両者を包摂した対応が不可欠であることが再認識されています。
このように、サイバーセキュリティの脆弱性が、社会・経済活動のあらゆる側面に及び、国家の安全保障に大きく影響することが避けられない時代になりました。弊会は、この脆弱性を軽減・抑止するための人材育成に、社会的責任を有していると認識しております。
本年も以下申し上げます。当協会の発足が「画期的であった。」と評されるよう引き続き努力を重ねる所存です。今後とも皆さまの御協力、御叱正を宜しくお願い申し上げます。
本年が皆様方にとって平穏で輝かしい一年となりますことを願っております。
理事長 林紘一郎