風薫る5月を迎え、青葉がそよぐ季節になりました。皆様方におかれましては、心地良い空気を感じ、自然のアロマに包まれておられることでしょう。
先ずは、当協会で実施した講演会についてお伝えします。HPにおいても概要を掲載しておりますが、3月に国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)サイバーセキュリティ研究所サイバーセキュリティ研究室長の笠間貴弘氏を講師としてお招きし、「NICTにおけるインターネット空間の観測と対処の取組」を演題として御高話を頂きました。サイバーセキュリティに携わる聴講者を唸らせる緊張感に満ちた内容でありました。また4月には、元警察大学校警察情報通信研究センター所長で、澤田雅之技術士事務所所長の澤田雅之氏から「ドローンの進化とカウンタードローンの動向:ジャミングが効かないドローンやレーダーで検知困難なドローンの出現」と題して世界中の戦争・紛争地域において主力装備となったドローンの技術の進化・深化について語って頂き、その対処方策の開発・実用化動向など、大変興味深い、最新情報に触れることができました。いずれの講演も活発な質疑応答が行われ、時間超過のなか終了いたしました。今月以降も引き続き質の高い講演会となるよう計画立案・調整を実施して参ります。
さて、3月13日、警察庁サイバー警察局は 令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について公表しました。その中でサイバー攻撃の前兆ともなるぜい弱性探索行為等の不審なアクセス件数が増加の一途をたどり、その大部分が海外を送信元とするアクセスが占めていると述べております。また、4月8日にいわゆる「能動的サイバー防御」を導入する法案が衆議院本会議で可決され、参議院に送られました。4月18日、その審議が開始され、現在も継続中です。この法案の成立が、本法人の活動にも大きく影響を与えるものと認識しており、以前にも申し上げましたが、「いよいよ出番が近づいた」という身の引き締まる思いが改めて高まりました。
サイバー空間に目を向けますと、複数の大手証券会社において利用者の口座が乗っ取られ、勝手に取引される事案が相次ぎ、また、大阪・関西万博開催前にはチケット販売サイトを装って、個人情報をだまし取ろうとする偽サイトが確認されたとの報道もありました。企業、団体、教育機関等からサイバー攻撃による被害が公表されない日が無いと言っても過言ではないと思います。その中で、International Information System Security Certification Consortium(ISC2)の調査(2023年)によると、日本のサイバーセキュリティ分野における人材不足人数は約11万人とされています。
このような状況の中、官民を挙げての様々な検討の加速化、進化は言わずもがなです。引き続き、安全保障関係者等との人材育成に関する意見交換を重ね、当協会の発足が「画期的であった。」と評されるよう努力を重ねる所存です。 今後とも皆さまの御協力、御叱正を宜しくお願い申し上げます。
理事長 林紘一郎