◎林紘一郎・旧理事長退任挨拶
この度の社員総会で、理事長及び理事を退任させていただくことになりました。
お引き受けした時点ですでに高齢の上、妻の介護をする必要がありましたが、その度合いが更に高まったためで、
ご理解をいただきたいと存じます。2023年12月の法人設立後、在任1年半強と短期間でしたが、
法人としての活動の方向を見定めることができ、後任に国際法の権威である中谷さんを迎えることができたので、安心して後を託すことができます。
その間、法人の設立を主導された発起人や専門家の方々、法人の活動の中核として活動された理事・研究員の皆さま、法人の実務を滞りなく遂行された職員の方々、
具体的なプロジェクトを遂行された防衛省のカウンターパートの皆さま、などなど多くの方々のご協力をいただいたことに感謝しております。
残念ながら法人としての基盤は未だ十分とは言えませんが、私個人は楽観的です。
というのも、これまで以下の3法人の設立に関与してきましたが、いずれも発展して今日も社会的な評価を得ているからです。
・1986年に先進諸国の電気通信事業で働きつつ、通信の経済分析や政策の在り方に関心を持つメンバーが個人の資格で設立したITS=International Telecommunications Societyは、その後500人近い会員を擁する学会となり、毎年4回程度の国際会議を主宰しています。
・2004年に開学した情報セキュリティ大学院大学には、設立準備の段階から参加しましたが、小規模ながらセキュリティを文理融合的に研究・教育するユニークな存在と認められるようになりました。
・その大学院を基盤にセキュリティの法制を研究するメンバーが集まったサイバーセキュリティ法制学会は、2014年から自主的研究グループとしての活動を始め、2019年には学会として独立しました。チャタムハウス・ルールが原則という、他に例を見ない学会として発展を続けています。
このような経験から、私はサイバー安全保障人材基盤協会の将来は明るいと思います。
ICTの分野は、AI、量子科学の発展など、まだまだ大きな技術革新が続くことでしょう。
それに連れて、セキュリティへの重要性はますます高まるものと思われます。私が経験した3つの事例と同様、
CSTIAにも大きな未来が待っていると信じ、皆様のご活躍に期待しています。
林紘一郎
◎中谷和弘・新理事長就任挨拶
林紘一郎前理事長の後を受けて、このたび理事長に就任しました中谷和弘です。
私は国際法を専攻し、41年間東京大学法学部の教員をつとめた後、昨年4月より東海大学法学部に所属しております。
2015年から2016年にかけて、エストニアにあるNATOサイバー防衛センターにおいて「サイバー行動に適用される国際法に関するタリン・マニュアル2.0」の作成に法律家として参加し、サイバー攻撃に関する慣習国際法の記述に従事する機会がありました。
また、2015年から2023年まで政府のサイバーセキュリティ戦略本部の本部員をつとめ、林前理事長とご一緒させて頂き、サイバーセキュリティのあり方について議論いたしました。
「サイバー攻撃は国際社会が直面する最大規模の脅威の1つであり、サイバー攻撃への対処は外交・安全保障の極めて重要な課題であります。サイバー攻撃に実効的に対処するためには予防が何よりも重要であり、そのためにはサイバーセキュリティに知見のある人材の育成が不可欠であります。人材の育成は日本にとってのみならず、国際社会にとっても重要な意義を有します。」
このような趣旨の発言をサイバーセキュリティ戦略本部の会議で何回かした記憶があります。
本協会が上記の「重要な意義」を有することを再認識した上で、理事長として微力を尽くしたいと存じます。
皆様のご高配を何卒よろしくお願い申し上げます。
中谷和弘